吉田K

98Y

日本の農業はなぜ衰退したのか

日本や中国では現在、産業の発展に伴う農村の衰退、そして食糧自給率の低下が問題となっている。一方同じく先進国である米国は農作物輸出国であり続け、高い食糧自給率を維持している。ここには一体何の違いがあるのか?今回は農業の構造的相違について見ていきたい。

資本か、労働か

これには資本集約的農業労働集約的農業の違いが関係している。これからこの二種類の農業の違いを説明していくが、まず前提として農業に必要な三要素は「土地」「資本」「労働」であるということを認識しておいていただきたい。

さて、資本集約的農業とは、「土地」に対して多くの「資本」を費やす(機械による農薬散布や収穫、灌漑設備の整備など)ことで農作物を生産しようという農業だ。米国に代表される資本集約的農業にはあまり多くの労働者が必要ないため、国の産業が発展し都市部や工場に多くの労働者が奪われるようになっても継続しやすく、むしろ技術の発展によってさらなる効率化が見込めるという特徴がある。

一方労働集約的農業とは、「土地」に対して多くの「労働」を費やすことで農作物を生産しようという農業だ。こちらは国の産業が発展すると都市部や工場に多くの労働者が奪われ農業が立ち行かなくなり、日本で見られるような農村の衰退が発生することとなる。

つまり日本や中国は後者の労働集約的農業であるため、農村の衰退や食糧自給率の低下が起こっている、ということができるのだ。

 

労働とコメ

さてここまでは、米国は資本集約的農業を採用し日本や中国は労働集約的農業を採用していることが違いとなっているということを説明してきた。しかしここでもう一つ疑問が浮かび上がってくる。なぜ日本や中国は資本集約的農業を採用しないのか?なぜ米国は労働集約的農業ではなかったのか?

実は、この疑問の答えは気候や食文化、人口密度と大きく関わっている。

米国と日本や中国の大きな違いは何か。それは気候だ。

米国には巨大な乾燥地帯が存在しており、乾燥地帯は小麦の生産に適している。小麦は面積あたりの収穫量やそこから得られるエネルギーが比較的少なく、人数を養うのに大量の生産が必要だ。よって小麦を主食とする地域は比較的人口密度が低いと言われている。現代でいう欧米諸国がこれに当たる。このような地域では、面積あたりの労働者数が少なくて済む資本集約的農業が発展する。

一方日本や中国が属するアジア地域は、モンスーンと呼ばれる季節風が多量の雨をもたらす地域だ。このような地域はの生産に適している。米は面積あたりの収穫量やそこから得られるエネルギーが比較的多く、小麦と同じ収穫量で多人数を養うことができる。よって必然的に、米を主食とする地域では人数を生かすことのできる労働集約的農業が発展するのだ。

 

まとめ

日本や中国の農業の衰退には、気候・主食に起因する農業構造的問題が関わっていた。しかし農村の人口が減った今、日本でも最新技術を用いた資本集約的農業を行う農家が現れ始めているようだ。産業が高度に発展した現代日本だが、これからの農業にはまだまだ目が離せない。